種類 -species-

南極やオーストラリア大陸をのぞき世界中にその仲間を見ることが出来ます。世界には、13種類のカワウソの仲間がいます。その中にテレビの動物番組や密輸で有名になった「コツメカワウソ」や水族館で人気者の「ラッコ」も含まれます。

ここでは、かつて日本に生息した「二ホンカワウソ」や「ユーラシアカワウソ」のグループである「ルトラ属(Lutra)」を中心に説明していきます。

生息地 -habitats

ユーラシアカワウソは、真夏の30℃を超える暑さの中でも氷点下10℃の環境でも魚を取りに水に潜っていきます。それ故、ロシアの極寒の地から南方の台湾にまで広く分布しています。

韓国華城市のシファ湖湿原公園にて(提供:チェ・ジョンイン)

カワウソは、1日に魚など大量に食料を採取するために魚影の少ない渓流や深度の深い湖で生活することが出来ません。また、身を隠すことが出来ない3面護岸の川や四季を通して水量が一定でない川も敬遠します。食餌となる魚が豊富で葦や岩で身を隠すことが出来る場所で生活をしています。海岸沿いでは、真水の流れ込みや身を潜めながら上陸できる場所を中心にして活動します。

カワウソの生息する対馬の河川
寿命 -lifespan-

動物園などで飼育されているカワウソの寿命は、約15年ほどです。しかし野生では1年生存率が50%を切ります。多くは、事故や病気ですが食料不足もあり共食いも報告されています。野生では、限られた生息域のため世代交代が激しく寿命はせいぜい5~6年と推測されています。韓国においても毎年、交通事故や洪水によるカワウソの死亡例が報告されています。

(提供:ハン・サンフン)
体型 -features of body

カワウソは特異な体型をしており、耳が非常に小さく、頭が扁平で尾が太く長いという特徴を有しています。すべてが水の中で抵抗なく泳ぎに特化した体型に進化しています。太く長い尾は、単なる円錐状でなく上と下からつぶしたような扁平の形をしています。この太い尾が泳ぐとき足ひれのように推進力をつけるのです。

鼻と目、耳が同一線上に位置している(提供:チェ・ジョンイン)

身体は、刺毛と言われる外層と柔らかく空気を含んだ柔毛の内層の2重の密な被毛に覆われています。そのため氷で覆われた湖でも魚を捕まえて生活することが可能なのです。
鼻は、カワウソの種類によって形が変わっており、ユーラシアカワウソは、王冠型をしています。この鼻は、水中で鼻孔を周りの筋肉でピッタリ閉めることが出来ます。カワウソは、顔に多くのひげがあり、このひげがセンサーの役割をして濁った水中でも獲物を見つけたり障害物をよけたりすることが可能です。

上が王冠型のユーラシアカワウソ、下が栗型のカナダカワウソ

顔のひげの多さに注目

■手足 forefoot,hindleg

ユーラシアカワウソは、前足後足とも指が5本で指の間に大きな水かきがあり水中で大きな推進力を発揮します。また、爪は太く攻撃には適していませんが、土を掻いたり掘ったりすることに役立ちます。爪を引っ込めることが出来ないので足跡は5本の指球と爪の跡が残ります。また前足の手のひらの掌球が大きく特徴があります。
あし裏に被毛はなく、体温より低くひんやりした手のひらをしております。この手や足は非常に敏感な感覚器となっており、触れることにより物質を見分けることが出来ます。また、動物界でも群を抜く器用さで、手で掴む・持ち上げるだけでなく足でも魚などを挟み込むことが出来ます。この手足のおかげで水中で自在に魚をつかみ取ることが可能となっています。

右前足の足裏、肉球の大きさに注目
左前足
左後ろ足

食性 -food habit

食べ物は、魚を主としますが地域によってカニなどの甲殻類、カエルや昆虫、そして鳥も捕食します。1日で体重の約1割の食べ物を必要とします。それは成獣のオスで約1.5kg、メスでも1.0kgの獲物を必要とし、鮎であれば毎日10~15匹食べる必要があります。それは水中で活動することでカロリーを大量に消費することと解剖学的にカワウソには盲腸がなく腸管も体に比較して短いため、食べて数時間のうちに消化されてしまうためです。糞には未消化物も多く含まれ、同じ大きさの動物と比べても魚の摂取量が多い理由です。

カワウソの採食(提供:チェ・ジョンイン)
糞には多くの魚の骨が残ります
気に入った場所には糞が堆積してます

また、カワウソの特殊な採食行動として、食べ物が多いときカワウソは、魚のおいしい腹部のみを食べて頭やしっぽを残して食べ散らかすことがあります。それを人は「獺祭」と呼びました。

獺祭と言われる食べ散らかし
獺祭と言われる食べ散らかし
縄張り -territory

カワウソは、魚を取る猟場と寝所によって個々の縄張りが決まってきます。海岸・河川・平野部によって違いがありますが、カワウソは一晩で、メスは往復10kmほどオスになると50km移動するものもいます。彼らは、夕方から行動し始め、移動中に「休み場」で休憩を取り、朝方に「巣穴」に戻って日中は寝て過ごします。また簡易な寝所の「寝屋」で日中を過ごすカワウソもいます。

■休み場 resting sites

カワウソは、縄張りを回遊する間に何度か休憩する場所「休み場」を持っています。その場所は、水辺に接しており自然の岩や穴を利用し、間口が大きいのが特徴です。外からは中が直接確認できず、ある程度の広さのある空洞になっています。中は乾燥しており何も敷き詰めておらず、カワウソ独特の魚臭がするのが特徴です。また、多くはその入り口や寝床の近くにはサインポストとなる糞が排泄してあります。

川岸にある岩の下の休み場
その入り口には糞や足跡が残されている

■寝屋 bed

カワウソは、縄張りを一晩で廻りきれない場合は、昼間に「寝屋」にてひと眠りします。オスなどは、その「寝屋」をたどりながら70~80kmの自身の縄張りを回遊し、その中に含まれるメスの縄張りを巡っています。その寝屋は、洞穴などではなく草などで敷き詰められ、川岸に近いところに作られています。

カナダカワウソの寝屋
草の中で体を収めるようになっておりその中にも糞が確認できます

■巣・巣穴 holts

我々は、このカワウソの巣穴を実際には確認したことはありません。韓国の研究者でも実際に使用されている巣穴を確認したことはないとのことです。巣穴は、メスが出産子育てをするような最も安心できる場所です。「カワウソの巣穴」は川岸の土手の水面に近いところに入り口があり1mほどの洞穴を作り、通気口があると多くの本に書いてあります。しかし増水等で水没する高さにカワウソは巣を作ることはありません。地元の研究者の証言や調査によってカワウソが出現する場所や幼獣の鳴き声から山の中腹に巣が存在すると考えられています。 イギリスでは、岩で囲まれた自然抗やアナウサギなど動物の空けた穴を利用し、室内に草や枯葉を敷き詰め、外から確認できないようになっているとのことです。

巣があるとされる崖
崖を上るカワウソ
臭い付け行動 Sprainting Behavior

縄張りを主張するために彼らは独特な臭い付け行動をします。他の動物たちの縄張り行動では、尿や糞の排泄により臭いをつけたり、身体から出る分泌腺をこすりつけたりすることによって縄張りを主張します。しかし、カワウソは糞・尿以外に肛門の左右にある肛門腺(Anal scent sacs)から出る分泌物を排泄、付着させ自分の縄張りを示します。この分泌物は、排泄すぐは半透明の茶褐色をしていますが、時間とともに濃緑色~黒色へと変化します。日にちがたつとタールの様に変化し、粘着度が高く長くその場所に残存します。またこの分泌物の組成を調べるとアポクリン腺タンパク質と多粘液糖および皮脂腺脂質を含んでおり、この組成の違いに個体差があるためカワウソ間にて情報を享受していると考えられます。

糞の上にある黒っぽい粘液物が分泌物
人工物の上に排泄中

また、一般的な糞や尿も縄張りを示すための個体識別として利用されます。ポイントになる岩や木の上、コンクリートには糞が排泄されています。砂地では、前あしで砂をかき集めて砂の山を人工的に作り出して(「sand castle」や「otter mount」と称される)その上に糞や尿で臭い付けをします。

砂をかき集めて作られた「sand castle」
砂をかき集めて作られた「sand castle」
病気 -disease-

自然界での死亡は、轢死や栄養失調、幼獣時の溺死が多くを占めます。しかし、症状に出ない病気や死につながる病気も発見されています。

■寄生虫

川の魚介類を食べているため、それらに寄生する「吸虫類」「条虫類」の内部寄生虫に罹患します。しかし、ほとんどが生体に影響を与えることはありません。しかし、原虫疾患のトキソプラズマ症はその個体の生命を脅かす危険性があります。

条虫の片節の入った糞
カワウソから検出された「壺型吸虫」の虫卵

また犬の感染で有名な蚊が媒介する「フィラリア症」のdilofiralia canisの感染も確認されています。

■感染症

イタチ科の動物も多く感染するディステンパーに感染することが知られています。そのため日本においても犬用のジステンパーワクチンを飼育個体に注射して予防もしています。また狂犬病のウィルスにも感染します。海外ではこの狂犬病のワクチンを動物園などでは接種しております。

■内科疾患

歯牙疾患や腫瘍なども報告されております。また、極度の栄養不良により肝障害を起こしたり、低体温症で死亡も確認されています。また飼育下においては、食餌によっては腎臓に結石が析出することが広く知られています。この腎結石が尿管閉塞や腎障害を起こす可能性はあります。

カワウソのレントゲン写真(白いものが腎結石)

■その他

捕獲個体では骨折や後肢麻痺などの神経疾患なども報告されています。