カワウソと見間違いやすい動物たち

このサイトでは広くカワウソの目撃情報を求めています。しかし、現状はカワウソ以外の情報がほとんどです。情報をいただけるのは大変うれしいのですが、カワウソ以外の動物も知っていただくためにこのコーナーを設けました。

① ヌートリア

カワウソと間違えられる動物のナンバー1はヌートリアです。
えっ?そんな動物いるの?と思った方、いま日本では爆発的に増えているのです。ヌートリアとは大きさが50~60㎝にもなる南米産の大ネズミです。「ヌートリア」とは「カワウソの毛皮」を意味するように、一見カワウソと大きさや色がよく似ています。しかし、カワウソと違い尾が細く、胴体が寸胴で昼でも多く目撃されます。

ヌートリア 撮影:安田 守 ※この写真は安田氏の許可を得て使用しています。

川で泳ぐヌートリア 提供:井倉将都

② ハクビシン

今でこそハクビシン(外来種)を知る人は多くなりましたが、つい30年ほど前までは外来種か在来種かと論議になっており、某県では県の天然記念物に指定されていたほどです。
カワウソを(ハクビシンも)良く知らないと、車のヘッドライトのシルエットがカワウソと思ってしまうかもしれません。
ハクビシンは頭胴長が60㎝でカワウソよりもやや小さく、指の間に退化した水かきはあるモノの、カワウソやテン・イタチのように泳ぐことは得意ではありません。尻尾と体長との割合が40%と尾が長いので(カワウソは平均32%)カワウソかと思ってしまいますが、付け根がカワウソよりも細く(カワウソの尾の付け根はカンガルーのようです)、耳が大きくて顔の真ん中の白い線が特徴です。

ハクビシン

①・②の補足

太平洋戦争中、毛皮需要に応えるためにヌートリアは南米から、またハクビシンは東南アジアから連れてこられ、日本各地の農家の副業として養殖されたものが、戦後逃げ出して野生化したものです。
毛皮は、満州など寒冷地に赴く兵隊たちの防寒用に大量に必要でした。これら外来種だけではなく、タヌキ・テン・北海道からキタキツネ(国内外来種)を移入して、日本各地に「養狸場」や「養狐場」があったのです。ヌートリアは「ヌマダヌキ(沼狸)」と呼ばれ、音読みが「ショウリ」であることから、「勝利」につながる縁起のいい毛皮としてもてはやされました。養殖まではされませんでしたが、滑空するムササビの毛皮は「敵に撃ち落とされない」という縁起を担ぎ、飛行帽の耳当てとして大量に殺されました。

 ヌートリアは、40年前までは西日本に多かったのですが、今は全国の河川や池や沼に棲んでいます。鼻の穴がカピバラのようで、前歯がオレンジ色なのが特徴です。 
 カワウソ研究会も過去に何度かカワウソ目撃情報の真贋を確かめてほしいと、地元行政から頼まれて現地調査をしたことがありますが、聞き取り調査や足跡からどれもヌートリアと判断しました。数年前までは、ヌートリアやハクビシンを知らない人が多かったのでやむを得ないと思います。移入経路は不明ですが、韓国でも野生化しています。

3種のシルエット

また、ヌートリア同様に毛皮目的で、北アメリカ原産の大ネズミであるマスクラットも移入されて野生化しましたが、東京の葛飾区や千葉の一部と局所的に繁殖しているのみなので、今回の記載は見合わせました。

③ イタチ

イタチも泳ぎが得意で、水の中でサカナを捕まえます。しかし、カワウソが全長約1メートルもあるのに対して、イタチは3〜40㎝です。

イタチ

④ 夏毛のテン

冬毛のテンは全身がきれいな黄色なので、見間違えることはないと思いますが、夏毛になると明るい茶色に換毛します。やはり泳ぎが得意なので、見間違うかもしれません。頭胴長が50㎝とイタチよりは大きいですが、カワウソより小さいです。

テン(夏毛) 撮影:安田 守 ※この写真は安田氏の許可を得て使用しています。
⑤ その他

上記4種の他に、ミンクも間違えられるようです。昔は北海道限定だったのですが、長野や栃木でも野生化しています。泳いでいる姿はカワウソのようですが、頭胴長が40㎝ほどで大きさがカワウソに比べてかなり小さいです。

ミンク

③・④・⑤の補足

イタチもテンもミンクも、イタチ科の動物で、泳ぎが得意です。
明らかにカワウソよりは大きさが違うのですが、テンが夏に換毛することを知らなければ、「すわっ!カワウソ!?」と見間違えるのはやむを得ないと思います。何しろ、過去に高知県において、ハクビシンの腐乱死体を「カワウソの幼獣」と鑑定した珍事件もありました。当時はカワウソのフィールドワークはもちろん、PCR検査などの科学的調査が出来なかった、そんな時代の話です。

もしどこかで「泳ぐ黒っぽい動物」を見つけたら、当サイトに情報をお寄せの前に参考にしてください。そして、これらの動物と「違う」「わからない」ならばぜひご連絡ください。今後、このサイトでは「カワウソと見間違える5本指動物」の足跡の見分け方も紹介していきたいと思います。