黒島 現地調査報告 ―2025年5月長崎県対馬市―

●はじめに
本報告書は、今年2月の対馬の無人島の調査時に確認された足跡の正体を突き止めるための追跡調査です。
2025年5月3日(土)~5月5日(月)の二泊三日で行いました。


●調査旅行の目的
・今年2月の調査において発見した足跡の追跡調査及び動物の同定
・この島(黒島)の衛星写真にある沼の存在の確認


●調査旅行の概要
期間:2025年5月3日(土)~2025年5月5日(月)
調査地:長崎県対馬市黒島(無人島)
参加者:カワウソ研究会 共同代表:前田直樹 /井倉将都(愛知県の開業獣医師。昆虫に詳しい)

調査旅行の様子はこちらのYouTubeからご確認ください。

検証

対馬「黒島」でこれまで採集した足跡の検証をします。

ここ黒島には、タヌキや野良犬などのイヌ科の動物は生息しません。イタチも生息していないと思われます。そのため今回の足跡の検証として「カワウソ」か「テン」かの判別したいと思います。



検証前に足跡の特徴となる肉球の解説をいたします。

犬の右前脚
検証前に足跡の特徴となる肉球の解説をいたします。犬とカワウソ(コツメカワウソ)の足裏を比較してみます。犬の肉球は第2指球から第5指球までが大きく、掌球と合わせて地につきますが、第1指球と手根球は付きません。

カワウソ(コツメ)の前脚
それに比べカワウソの肉球は第1指球から第5指球までしっかりと地に付き、掌球と手根球がくっついて大きな肉球を形成しています。

次にカワウソの足跡について解説いたします。
これは韓国で採取したユーラシアカワウソの右前脚の凹型です。指球が5つと真ん中に大きな掌球と指根球が付き、爪跡は大きくなく指との間に足ひれが見られます。そして第1指から第2指が内側に向いています。

飼育下のユーラシアカワウソ 
右前脚の足裏が観察できます

韓国で採取したユーラシアカワウソの足跡(手前が左右の前脚、奥が左右の後脚)

ユーラシアカワウソ右前脚の足跡


2022年に撮影されたツシマテンでは、「テン」の足跡の特徴について解説します。
テン、この黒島にいるのは天然記念物の「ツシマテン」ですが体長60㎝前後、体重1.5㎏程の対馬だけに生息するイタチ科の動物です。足跡は前後とも5本指で横幅は60㎝未満、爪痕はしっかり残ります。

2022年に撮影されたツシマテン

では、「テン」の足跡の特徴について解説します。
テン、この黒島にいるのは天然記念物の「ツシマテン」ですが体長60㎝前後、体重1.5㎏程の対馬だけに生息するイタチ科の動物です。足跡は前後とも5本指で横幅は60㎝未満、爪痕はしっかり残ります。

今回、テンの確実な足跡を採取できたため、過去にこの黒島での調査で採取した足跡を検証することができます。

では、今回のテンの足跡を検証してみます。最大の足跡を材料に選びます。横長はテンにしては大きく63㎜あります。ただ指球は5個確認できますが肉球の付き方に比べ爪跡が深く付いています。またよく観察すると爪が内側に曲がっています、また掌球も大きいのですが指先や爪に比べて付き方が浅いです。

2025年2月の情報

そして今年の2月の調査で採取した足跡を検証してみます。横長は63㎜で指球は5個ですが肉球の付き方は子の足跡も掌球に比例して爪跡が深く付いています。爪も内側に向いています。

2023年11月の情報

次に2023年11月の調査で採取した足跡を検証します。この足跡も横長は63㎜ですが、指球が大きく付きあまり爪痕は深く付いていません。掌球も大きく付いており今回のテンの足跡よりもユーラシアカワウソに近いと思われます。

結論

以上のことから今年2月に調査採取した足跡はすべてがテンの足跡であり、2023年11月の調査採取した足跡はカワウソの可能性が高いことが判明しました。

まとめ

今回までの黒島での調査において「池などの真水を貯留する場所は存在しないこと」「テン、イノシシ、アカネズミなどの哺乳類が存在するが、シカ、ヤマネコ、イタチは存在しない可能性が高いこと」「ここに生息するツシマテンは個体の体型が大きいこと」などがわかりました。

黒島の浜でエサを探す冬毛のツシマテン

確実なカワウソの痕跡やカワウソが休息できるような池などが存在しないことが分かりやや残念な調査結果でしたが、2023年の足跡はカワウソの可能性があるため時々この島にカワウソが寄って砂丘前の湾で魚を取っているかもしれません。

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